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アルゴン&アルゴンヌ


建築を中心とした旅のブログ http://www.studio-algo.jp/
by algone

カテゴリ:本( 17 )

「流星ひとつ 」沢木耕太郎

もともと歌謡曲が好きというわけではないのですが

昭和40年代あたりの歌謡界には
本当に才能のある人たちがひしめいていたなあと
改めて思います

近年自殺してしまった藤圭子もその一人


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1979年に突然引退を発表した彼女への
沢木耕太郎のインタビューです



メディアが押し付けたイメージにうんざりし
「誰にもわからない」と諦観していても

答えたくなければ答えなくていいですよと、ひくと、
なぜかしゃべってしまう藤圭子

行きつ戻りつしながら、読んでいる方もぐいぐい引き込まれます


「才能とは過剰ではなく欠落である」
村上龍の「ラッフルズホテル」に出てくる言葉を思い出しました


例えば目が見えない人に、第六感的なものが備わっていたり

か弱い鳥に、翼が付いているように

埋めなければならない穴があるからこそ
才能を持たざるを得なかったのではないか

一方で、「天才は1%の才能と99%の努力である」
という言葉もありますが

天才というのは、99%の努力を、凡人には不可能な集中力で成し遂げられる人なのだと思います


藤圭子も、淡々とした語りとは裏腹に
歌に対して、真剣すぎるほど考えこみ
自分の歌に対して非情なほどにきびしいのです

周りが全く気にならないほどの集中力




面白いと思ったのは、お金に対する感覚

貧乏から一気に高額な収入を得るようになった人にありがちな、お金への執着は驚くほど薄く

稼げなくなることへの恐怖心もないわけです

お金が入ってきて上質なものを見分ける目はできたけれども

ないならないで、それなりの暮らしをすれば良い

非常に健全な感覚


結局、沢木耕太郎はこのインタビューを発表せず

ただ引退して渡米した藤圭子に送るにとどめました

その辺の心情はよくわかる


それに対して藤圭子の返信は、
アメリカに留学して学生気分を満喫している新しい生活が感じられる、なんだかホッとするような内容です




それなのに、何十年か後に、結局自殺してしまう





その後の人生で何かあったのか


それともそれは宿命だったのか


凡人には知る由もないけれど

このインタビューでみせた
潔癖で健全で潔い藤圭子から、
自死というのは繋がらないのです



沢木耕太郎が今になってこのインタビューを発表した意味がわかるような気がします



それでいて彼女を「流星」と呼んでいること自体が
宿命を暗示しているような



昭和とはそういう時代だったのかもしれません





























by algone | 2015-03-29 09:17 | | Trackback | Comments(0)

カポーティーの「クリスマスの思い出」

カポーティは「ミリアム」のような、凍りつくようなおそろしい話を書く一方で

「クリスマスの思い出」のような、心温まるすてきな話も書いています。


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親戚をタライまわしにされている7歳の「僕」と、60歳を超えるそのいとこ「ミス・スック」のクリスマスの思い出


なんといっても終盤の凧揚げのシーン

ミス・スックの

「神様は私たちが死ぬときに姿を現してくださるのだと思っていた。
でもそれは大間違いで
今こうしている時にも、私たちは神様にお会いしているのだ」

というセリフ。

キリスト教徒ではない私にも身にしみる言葉です。







ミス・スックが登場するもう一つのお話し「感謝祭のお客」でもそうですが

子供にとって、「信頼に値する大人」との出会いがあるかないかが大きいと思うのです。

それは必ずしも親ではないかもしれません。

感謝祭のお客、オッド・ヘンダーソンは、偉大なシンガーになるのかも知れない、大悪党になるのかもしれない

いずれにしても、ミス・スックに出合ったことで、

彼はこれからもへこたれずにやっていけると思うのです。


そして「クリスマスの思い出」の「僕」(=カポーティー)も

ミス・スックと一緒に暮らした5年間が、その後の人生での

より所、支えになっていたのだろうと思います。


「信頼に値する大人」というのは
「正しいことをする大人」ではなくて、
「自分の信ずる所からずれない大人」

なのではないでしょうか。
by algone | 2013-12-25 21:07 | | Trackback | Comments(0)

伊丹十三「女たちよ!」

この本、初版が昭和43年
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「スパゲッティナポリタン」の時代に、
ほんとのヨーロッパを語る男

薀蓄といえばそうなのですが、話がすこぶる面白い


以前、松山の伊丹十三記念館に行って驚いたのは、子供の頃から絵も非常にうまいということです。
ものごとの本質を見ているのですね


で、このエッセイ集、どの章も面白いのですが、
やっぱり食べ物のはなしがいいです

ハリーズバーの、丸いサンドイッチとか、、

サンドイッチの端まで
具がつまっていたらどんなにいいだろうと思ったことがない人はいないに違いない(つくづく)


⬆何のことか分からない、という方、ぜひこの本を読んでみてください
by algone | 2012-12-11 23:48 | | Trackback | Comments(0)

小泉八雲集

松江の小泉八雲記念館は何度か訪れているのに
実は小泉八雲の本をまともに読んだことがなかったのです


でも、記念館に展示してある彼の文章、
特に日本についての考察を読むと非常に面白い


で、読んでみました
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日本に関する随筆や、おなじみの怪談を編集した新訳版です。


のっぺらぼうやろくろっ首など、古典的な怪談というものをちょっとみくびっていたのですが
これが非常に面白い。

小泉八雲の語り口もいいです。

随筆に「日本人の微笑」という文章があるのですが


自由競争により利己的な欲望を満たすことに終始して
社会的混乱などモノともしない西洋に対して

日本人は「道徳を合理的なものにして、さらに本能的なものにしている」

としています。

それでも、西洋の文化が流入して、日本の精神を古臭いものと笑う若い人たちも増えていると、
当時の八雲は憂いています。

素朴な歓びを受け入れる能力の忘却を、
純粋な生の歓びに対する感覚の喪失を
自然との聖なる親しみを

懐かしく思う時が来るのだろうかと、、

まさに100年後の私たちの姿を言い当てていると思います
by algone | 2012-09-01 21:38 | | Trackback | Comments(0)

「第2図書係補佐」又吉直樹~第4の欲求、文学欲~

今や、文学好きとして活躍されている又吉さんの本


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いろんな小説を紹介しているのですが

書いてある内容は自身のオモシロエピソードがほとんどで、
最後にちょこっとその作品について言及するだけ、なのに

無性にその本が読みたくなっている自分に気づくのです




そして、又吉さんと文学の関係が非常に興味深い。

これは万人に共通するプロセスではないかと思うのです


まずは、「自分は変だ」ということに気づく
  ↓
とりあえず、悩む
  ↓
文学に出合う
  ↓
「変な人間もありなんだ」と思い当たり、変な自分を受け入れる


(「自分はまともだから、そんな悩みなどもったことがない]、という人がいたら、そのことのほうが問題だ)




いくつかのエピソードで驚くのは、又吉さんが結構もてるということです

暗い、死神、と言われながら

彼女いない歴うん十年かとおもいきや、

ちゃっかり彼女はつくっていたりするのですね

それもこれも、やっぱり人と違った自分に気づき、受け入れているからこそ。



読書、とりわけ文学を読む、ということは

人間に不可欠な行為なのだと再確認した一冊



*電車などで読むと、ひとりで「ふっふっふっふ」と笑う不気味な人になってしまいますのでくれぐれも注意
by algone | 2012-07-05 23:15 | | Trackback | Comments(0)

「オリガ・モリソヴナの反語法」 米原万里 ~読書という幸せ~

この本が出た当時、連休の前日に購入し
文字通り寝食忘れて
連休初日に読み切った思い出があります。


それくらい面白い。


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故・米原万里さんはロシア語通訳の第一人者
お父さんが共産党幹部で
子供のころプラハのロシア人学校で学んだ経験と
豊富な知識がベースにあるので
フィクションではありますが
実話と錯覚するくらいリアルです。


読者に読ませて読ませて
(結構長いな話なのに)
まったく放してくれません

米原万里さんのエッセイも好きですが

この唯一の長編は傑作です。

もっと彼女の長編を読みたかった

若くして亡くなられたことは大きな損失です。

残念でなりません。



注意)
これから読もうかという方は、3食分の食料を用意してから読み始めることをお勧めします!
読み始めたら最後、トイレに行く以外、時間がもったいなくなるからです。
by algone | 2012-04-24 23:08 | | Trackback | Comments(0)

ある新刊を読んで思い出した 「悪女について」 有吉佐和子

雑誌の書評を読んで、あるミステリーの新刊を手に取ってみました。

題名は書きません、いわゆるpage turnerなのですが、、

ページをめくらせるのはうまいけど後に何も残さない。
登場人物もステレオタイプで誰にも共感しない。



この本を読んでいる間、思い出していたのは
有吉佐和子の「悪女について」

同じように、戦後から高度成長期にかけて
のしあがった女の嘘で固めた人生を
いろんな人物が語るという小説ですが

こちらは非常におもしろいです。

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作家の力量と情熱によって生み出される
一つの完結した世界


「身を削ってでも書きたいものがある」
という気迫を感じます。





瑣末なことではありますが、いまだに覚えているのは

華族出身の女性が
主人公がフランス料理の皿のソースをパンでこそげて食べているのを見て
「この娘は本物だ」
と思った、と語るところ。

フランス料理など見たこともなかった田舎の高校生は
「そうなのか!」
と、妙に感心したものでしたw


おまけ)
沢尻エリカ主演で「悪女について」のTVドラマがあるのですね
(たぶん見ないけど)

好きでも嫌いでもありませんが、
エリカ様、最近野心的に面白い役をやってます。
by algone | 2012-04-22 12:58 | | Trackback | Comments(0)

長谷川 潔 ~作品のひみつ~

長谷川潔の細密な銅版画をみていると

思わず引き込まれて


「あっち側」にいってします。


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静か過ぎて、凄みを感じる怖い絵というのがありますが
(ベックリングの「死の島」とか)

長谷川氏の絵は、それもとっくに通り越して

あまりの「静止」ぶりに、見ているものが永遠を垣間見る

そんな絵です。





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by algone | 2012-04-11 20:30 | | Trackback | Comments(0)

「横浜ハイカラ貧乏記」熊田千佳慕

すっかりファンになってしまった千佳慕さんの自伝。
挿絵画家になって、「埴生の宿」に住みながら、貧しいながらも活躍される半生が書かれています。

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とにかく絵を描くのに時間がかかる。
資料を集めたり、虫(生きているのと死んでいるの)を収集したり、スケッチしたり
登場人物ひとりひとりの洋服をデザインしたり、、、
と、大忙しなのだそうです。

とても楽しそうです。

自身の初展覧会に、エスカレータでさっそうと登場したいがために
夜の地下鉄駅でエスカレータに乗る練習する千佳慕さん。
(70近くになるまでエスカレータに乗ったことがなかったのだそうです)

おちゃめ。

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絵を描くことは、神様へのレポートなのだそうです。

こんなふうに邪念のない気持ちで、自分の作品に取り組めることこそ、
最高の贅沢といえるでしょう。
by algone | 2011-11-09 22:09 | | Trackback | Comments(0)

「おやゆびひめ」 熊田千佳慕 

「作家の家」でも紹介した熊田千佳慕さんの「おやゆびひめ」をネットで購入しました。

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子供のころに読んでいたこの本がまた手元にきてうれしい。
本当に絵が緻密で、ついつい小さな人の目線になっているのです。


(おやゆびひめの寝床、胡桃の殻にバラの花びらのふとん)
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ところでひとつ気がついたことが、、、

ヒロインであるおやゆびひめがあんまりかわいくないのです。。。

裏表紙の王子様とのツーショットなんか、肥えた近所のおばちゃんみたいな顔です
王子さまに至っては上〇恵美子そっくり。
(す、すみません!千佳慕先生)

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おやゆびひめの絵の多くは、後ろ姿や横顔(←これはかわいい)


千佳慕先生のプライオリティーは、
まずは虫や花、風景、、で、最後のあたりに人間が位置づけられていたのではないかと、、、


こんな愛すべき熊田千佳慕先生のエッセイも購入しました。
amazonさまさまです!
by algone | 2011-11-08 20:42 | | Trackback | Comments(0)


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